トゥーサンが「浴室」を書いてからもう十七年も経つんだ。
その当時、よく読んだ作家の一人で、シンプルな文体と物語性の無さ、登場人物の心理描写がほとんど無いのに行間で感じてしまうような作りはいかにもフランスだなーって感じで好きだった。
そして、十七年が過ぎ、、まず装丁どうなんだ? 「愛し合う」の縦組みのぶっとい筆文字はカッコウ悪いような。
物語的には、東京、京都の描写が外国人にはいいのかもしれないけど、どうも苦手かな。主人公のキーワードの「塩酸」もしっくりこないというか、使った後も生きてこない。
「浴室」から「愛し合う」への心理描写の変化が進化というのなら、ま、世間一般的ないい歳の取り方をしたんだろうなと思う。
美しいとは思うんだけど、書いてあるほど破滅的な情感は伝わってこない。
小説として真っ当だと思うけど、見え隠れするほんのちょっとした狂気が読む側としては堪んないと思うのだが。