早期退職を夢見て

Dreaming of early retirement

パールベイ・バンガロー

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1994年、27の時、会社を辞めて1年間旅行に出た。まだ旅の初めで旅なれていない頃、タイのサムイ島へ向かうフェリーの中で客引きに誘われ、初めてこのバンガローに泊まった。
チャウエンやラマイといった有名なビーチと違い、パンカビーチという寂れた場所にあるこのバンガローは連れていかれると交通手段のない陸の孤島で、自分でレンタルバイクを借りるかオーナーが港に客引きに行く時にピックアップトラックの荷台に便乗するくらいしか、他の場所に行く手段がなかった。
バンガローは2畳位の茅葺きで、宿代は1日数百円。
宿代が安いのも当然で、食事、酒、タバコ、その他全てそのバンガローで購入するしかなかった。
その当時は特に日本人を狙って客引きしていたらしく、いつも数人の日本人客がいた。
ビーチなのに、気が遠くなるくらいの遠浅で、満足に泳ぐことも出来ず、毎日ハンモックでのんびり本を読み、夜は気の合う旅仲間と騒ぎ、深酒をあおった。

旅に出ると、恋をしやすくなるらしく、彼氏と一緒に旅行していた女の子を好きになって、ここからしばらく一緒に旅したりもした。

日本に戻り、結婚してからも、嫁さんと数回、このバンガローに泊まりに行った。
バンガローは年々客足が少なくなり、宿泊客が自分達だけのときもめずらしくなかった。
バンガロー専業だったオーナーは副業でガイドを初め、宿にいる時間が少なくなり、英語の喋れなかった奥さんはいつの間にか、かたことの英語を話すようになり、幼稚園児みたいだった2人の娘は行く度に見違えるほど大きくなっていった。
根強いリピーターがいるおかげで、なんとか細々とやっていけるみたいで、内情は詳しくはわからないが行くといつも笑顔で迎えてくれて、湾は美しく、そこに流れる時間は変わらない。

いつか宿の側に小さなバンガローを建てて、そこに暮らしたい。